「わかる」とは何か?
「ここまで何か質問はありますか?」
私は授業の区切りに必ずこのように言うようにしています。
どの生徒さんに対しても、どんな時でも毎回同じです。
ここまでの説明で、少しでも疑問に思ったことはないかを必ず聞くようにしています。
そして生徒さんが
「あります!」
といってくれると、うれしくなります。
なぜなら、わからない所がわかること、そしてそれを言葉にできることは生徒さんが本当の理解、実力アップのすぐ近くまで来ている証拠だからです。
反対に
「ありません」
と言われると少し残念な気持ちになります。
もちろん、授業ではできる限り丁寧に教えているつもりのため、わからないことがない、ということはうれしい言葉ではあります。
しかし、本当の意味で「わかる」事はとても難しいことだとも思っています。
生徒さんが「わかる」の使い方を勘違いしていないかが、少し心配になります。
そこで、今回は「わかる」とは何か?について書いていこうと思います。
「わかる」とは
「わかる」とは公式を当てはめて問題が解けることではありません。
「わかる」の意味は、アインシュタインの言葉を引用して説明させていただきます。
“あなたの祖母に説明できない限り、本当に理解したと言えない”
つまり「わかる」とはそれを知らない人に対してわかりやすく説明できることです。
自分が本当にわかった事は、自分の言葉で言い換えることができます。
そのことを知らない人に対して、相手のレベルに合わせて言葉を選び、わかりやすく説明できる事です。
反対に、本や、他人の言葉を繰り返すことしかできないときは、理解が不十分だと言えます。
例えば、
距離÷時間=速さ
となることを、おばあちゃんに説明することができなければ、速さについて理解したとは言えません。
(距離÷時間=速さになる理由は後日書きます)
「わかる」の3ステップ
本当の「わかる」ためには、3つのステップが必要です。それは、
「聞く」→「考える」→「教える」です。
人から何か新しいことを教えてもらうときは、まず先入観を捨てて、知ったかぶりをせず、まっさらな気持ちで黙ってその人の話を聞くようにします。
これは、書くのは簡単ですが、じつは一番難しいことです。
塾業界では「素直な子は伸びる」とよくいわれていますが、これについては私も同感です。
なぜ「素直な子は伸びる」かというと、素直な子は「聞く」ことがしっかり出来る子が多いからです。
第2ステップは、新しく学んだことを熟考することです。
このとき、正しく考えることができれば、たくさんの「なぜ?」が生まれてきます。
「なぜ?」が増えることを恐れてはいけません。
これができてるのは、能動的に勉強ができている証拠です。
この考える時間が「脳力」を育てる貴重な時間です。
考えることは机の前でなくてもできます。
お風呂の中や、電車の中、寝る前のベッドの中などで考えているときほど「そうか!」と新しい発見が得られるものです。
大切なことは、「いつも考えている」ことであり、そこで何も得られなくとも、その考えていた時間は決して無駄になりません。
また、わからないことは自分で調べることもとても大切です。
本やネット、塾の先生など、使えるものはすべて使って徹底的に調べてください。
最後に自分が学んだことを、それを知らない人に教えます。
もちろんそれは教科書や参考書の記述を繰り返すだけではいけません。
自分の言葉で言い換えてください。
何かを自分の言葉を使って人に教えようとすると、途中で必ず新たな気づきが得られます。
これは、私自身が塾で教えてきた経験からも間違いないです。
人に「教える」という最終段階に得られる気づきによって初めて、学びは完成します。
まとめ
「わかる」とはそれを知らない人に対してわかりやすく説明できることです。
つまり、アウトプットによって学びが完成するということです。
アウトプットの方法は、「友達に教える」、「自分専用ノートを作る」、「ひとり授業を行ってみる」等があります。
(ひとり授業とは、部屋で小さなホワイトボードを用意し、自分が先生になったかのように架空の生徒に授業を行うアウトプット法です。家族に心配されない程度に行ってください)
なお、個別指導のハルでは、授業の時間内に生徒さんができるだけアウトプットができるよう、指導しております。
講師の解説を聞く(聞く)→生徒が問題を解く(考える)→生徒が解き方を説明する(教える)
となることを理想としています。
生徒一人ひとりがそれぞれ、「聞く」、「考える」力は異なるため、必ずこのやり方で指導するわけではありませんが、生徒さんが講師に解き方を説明することで本当の意味での「わかる」ようになってもらいたいと思います。